各国農業の共存を主張するもうーつの問題意識は、農業が貿易の対象となる農産物の生産だけでなく、①その持続的な農業生産活動により洪水防止や水資源の酒養等の国土保全、②大気の浄化や緑豊かな景観の提供等の環境維持、③過疎地域への定住や文化の継承等の地域社会の維持という、多面的な機能を持っていることである。
このことは、経済協力開発機構(OECD)や日本の学術会議でも認められている。
ウルグアイ・ラウンドの合意においても、さらにはこれまでのWTO交渉においても、これら食料安全保障や環境保護の必要性などは、貿易の対象にはならず、そのため貿易で取引できない重要なもの、すなわち「非貿易的関心事項」として考慮されるものであると認められ、合意されている。