法制度や経済構造の異なる諸国間の通商紛争を取り扱うガットの紛争処理で各国が必要としているのは,具体的な問題に対する現実的な解決と和解(conciliation)であり,ガット上の義務との法的整合性はその手段として用いられることが多い。
実際の運用においては,たとえばパネリストの選出についても紛争当事国双方の合意が得られた人しかパネルを構成できない。
従来の手続きによると,パネル報告が作成されて理事会に報告されても,決定や勧告の内容に不満をもつ関係国が反対すれぽ理事会はこれを採択できない。
通常,このような状態は不利な条件にある締約国による「時間稼ぎ」と理解されがちであるが,実際には当該国政府が国内での調整にある程度の時間を必要としていることの証左である。
実際に理事会に提出されたパネル報告のほとんどは何回かの理事会における討議を経た後採択されている。