世界を相手にするときには、きわめて高度な戦略が不可欠だし、すくなくとも明治の日本にはそれがあったのだが、いまはまったく欠如している。
なぜそうなったか。
たかだかここ三〇年の繁栄の尺度で過去2000年を捨てたからだ。
経済主義が成功しすぎたための不幸といっていいか。
三〇年前にくらべればいまのほうが幸福じゃないかといわれれば、だれしも「そうだ」というだろうが、しかし、その結果がなにを失わせることになるかについての認識はまったくない。
アメリカ、ソ連、中国、あるいはヨーロッパやアジアの諸国が、対症療法だけではなく根本的な治療をやろうとしているのに、日本だけは、対症療法でことが足りると思い込んでいる。