しかし,そのなかでもパネルによる審議に一定の時間的枠組みを設定したことをはじめ,報告の採択や対抗措置の発動などについてある程度の自動性(automaticity)を認める方向で交渉の結着が計られている。
国際通商の世界に超国家的な権限を有する権威が存在しないかぎり,完壁な法秩序を打ち立てることはほぼ不可能である。
そうかといって,紛争解決のための機関があまりに弱体では誰もこれを尊重しなくなり,国際通商の世界は無法地帯となって「力による解決」(power-oriented solution)が横行することになろう。
今次ラウンドにおける交渉を含めてガットにおける紛争処理手続改善の歩みは,「力による解決」を放棄し,少しでも「ルールによる解決」
(rule-oriented solution)Yこ近づこうとする多国間の努力にほかならない。
その意味でも,1993年末にも予想されるウルグアイ・ラウンドの終結時までに本件交渉の結果を受け入れる各国,なかんずく主要先進国の政治的意志に期待したい。