WHOの事務局長は「DDTは何億人もの命を救ったが、一人も殺していない」と語ったことがあるが、少なくとも現在の日本は、全国的に衛生水準が非常に高くなっている。

DDTはもはや必要ないだろう。

ホタルの話だが、小西博士によれば、ホタルの棲息に致命的な打撃を与えた要素がある。

河川の護岸工事だ。

都市部、郊外を問わず、河川の改修工事が行われる際、コンクリートなどで高い岸壁を築く護岸工事も一緒に施されることが多い。

ホタルは、幼虫が春先に岸にはい上がり、湿った土の中にもぐり込んでサナギになり、ゲンジボタルなら初夏に、ヘイケボタルなら夏に、羽化する。

だから、土があるはずの川岸がコンクリートになってしまったら、ホタルの幼虫がサナギになる場所を奪うことになり、その地域でのホタルの絶滅をもたらす。


エイムズ博士は、サルモネラ菌を使って、わずか三日程度で化学物質の変異原性を調べられる「エイムズ・テスト」の考案者であり、発ガン物質の研究者としては、世界で最も良く知られているうちの一人だ。

しかも、1971年には、「たった一個の突然変異分子でも、動物に突然変異を起こすことができる。

だから、ある化学物質が動物に突然変異やガンを発生させないことが明白に証明されない限り、それを人に接しさせてはいけない」と主張し、環境保護団体などの人たちの英雄的存在だった人だ。

83年に、天然化学物質に関する試験データを発表する少し前あたりから、エイムズ博士は考え方を変え、現在では、当時の発言は極端すぎたと本人が釈明している。

そんな背景もあって、「考えられる発ガン危険性のランキング」と題したこのレポートは、非常に大きな議論を巻き起こした。

ABCテレビがニュース番組で取り上げたり、リーダーズ・ダイジェスト誌が誌上討論を企画したりした。


日本農薬学会の副会長で、農薬研究者として世界的にも著名な、住友化学工業宝塚総合研究所長の○○さんに登場してもらおう。

最近の農薬は安全だと言いますが、昔、DDTを使っていた時にもきっとそう言っていたのではないでしょうか。

もし変わってきたのなら、それはいつごろからですか。

「農薬は安全だとは言いません。毒です。砂糖も塩も、みんな毒であって、100%安全なものなんてありません。

DDTが防疫薬剤や農薬として使われ始めたのは、1940年代からです。

その当時、環境科学という学問があったか、あるいは、今日言われているような慢性毒性ということがどれだけわかっていたか。

哺乳動物の体内で化合物がどういう挙動をとるかという、代謝研究なんてものはそもそもなかった。

そういう"ないない尽くし"だったんです。」




「農薬」は評判が悪い

農薬は、新聞や雑誌、あるいはテレビなどのり上げられる時も、ほとんどがワルモノとして扱われている。

ところが、農薬関係の企業は、「農薬は安全」と言うし、国や都道府県な「正しく使えば何も問題ない」という。

しかし、そのひとつひとつを見ていくと何が間違っているのかが、全くといっていいほどわからなくなる。

氾濫する私たちはどれを信ずればいいのだろうか。

農薬は一体、どこまで安全で、どのくらい危険なのだろうか。

いま、さまざまな形で流布されている農薬情報の中から、代表的なものん次のように分類できる。

虫を殺したり、草を枯らすから毒であり、人間の身体にも右作物に残留するからキケン。

多くの農薬に発ガン性があり、子孫に悪影響が含まれる。


「適期防除。これが大事です。一番いい時に防除することが、結局は回数も量も減らせることになるんですから」

農薬が作物に残留することを心配する消費者が増えている。

果物や野菜は必ず洗って食べるという人も多い。

しかし、お茶を洗って入れる人はいない。

だから、茶農家も、農薬の使い方には、厳格なルールを作り、細心の注意を払っている。

掛川のお茶から、残留農薬が検出されたことはない。

「万が一にでも、一度そんなことになったら、産地としては致命的な打撃になる。これからもないでしょう」掛川農協の職員も自信をもって笑った。



千葉県の1987年の農業粗生産高は4,357億円で、北海道、茨城県に次いで第3位の農業県である。

なかでも野菜は、15,363億円で、全国の8.2%を占め、日本一を誇っており、首都圏はもとより、全国への生鮮野菜の供給基地として重要な役割を果たしている。

野菜の消費は、食生活の多様化、洋風化や健康志向の高まりなどを反映し、その消費構造に変化がみられているが、総量としてはほぼ横ばいで推移している。

このため、野菜の需給緩和基調が定着し、産地間競争の激化もみられている。

千葉県の東部に位置する山武地域は、九十九里平野と両総台地の一部から成り立っている。

この地域は、地形と地質の関係で、貯水能力が乏しく、農業生産は極めて不安定だったが、昭和40年の両総用排水事業の完成で、山武地域の農業は急速な発展を遂げた。



大阪市春日出に、1988年に完成した〇〇化学の安全性研究所は、実験が終ったら、入口に戻らず、ダーティー廊下という所を通って外に出る。

つまり、人でもモノでも、きれいな所からきたない(ホントに汚れているわけではないが、汚れたとみなされる)方に向って、一方通行になっているわけだ。

動物飼育室は1階から7階まで、全フロアーの半分くらいを占めていて、1階には実験機器などの洗浄、殺菌室もある。

これら全部が、この「バリヤーシステム」を採用していて、一度入ったら絶対に逆戻りできない仕組みだ。

エレベーターも、クリーン用(CEV)とダーティー用(DEV)を使い分けている。

温度、湿度、日照(人工光)時間などはもとより、給餌、栄養コントロールなども万全であり、ストレスを起さないような工夫も施されているから、病気にかかるようなことはまずない。



残留農薬検査

農薬の開発~粒剤に決まるまで

「剤の特長を生かすためにも、土壌処理用の粒剤でいこう」と決まったのは82年だった。

もちろん、ここまで粒剤について検討しなかったわけではない。

しかし、粒剤にすると、粉剤に比べて3倍くらい有効成分量を多くしなければならず、その場合、価格が高くなってしまうという問題がひっかかっていた。

ところがこれを、工場関係の合成研究陣が苦心の末、工業的合成法のコストダウン技術をモノにしてくれたことで、問題は一気に解決した。

「それなら、粉剤は他社からもいろいろ出ているし、特徴を打ち出せる粒剤で、となったわけです。"これでやっとウチもいもち剤を出せる"と当時は勇んでいました」

こう言って、当時をふり返える農薬研究所主席研究員は、生物関係の研究スタッフとして、開発にたずさわっていた一人だ。


発ガンの判断(残留農薬検査)

農薬とは無関係に自然発生的ともいうべき発ガンがある。

これを農薬(専門用語で被験物質と言うのだが)を投与していたグループの発ガン率とを区別するのがむずかしい場合もある。

もうちょっとわかりやすく説明しよう。

たとえば、試験群のラットが、全部、6ヵ月以内に発ガンして8ヵ月で死んだら、これは誰でも「クロ」と断定できる。

「これは発ガン性が高い」ということになる。

ところが、試験群で3匹、対照群で2匹が発ガンした、というような場合は、ちょっと素人では判断がつきかねる。

そういう場合は、発病の部位や、できた腫瘍のタイプなども細かく分析するのだが、専門家にとっても高度な知識、技術と経験を必要とする。


全く新しい化合物、それほど新しくない化合物など、とにかく候補化合物ができると、まず、マウスを使ってごく初歩的な急性毒性の試験を行う。

何しろ未知のものだから、ひょっとしたらとんでもない猛毒物質かもしれない。

これから研究を進める上で、研究者に危険がないかどうかをチェックするのである。

もっとも、「研究に携っている者は専門家ですから、構造式をみれば、急性毒性が強そうだという程度なら化合物の大まかな特徴は見当がつきます」と日本曹達研究開発の方が説明してくれた。

さて、新しい化合物ができたら、今度は、これを薬効スクリーニングでふるいにかける。

どういう効果があるかを、実際に雑草や害虫を使って調べるわけだ。

残留農薬検査

一般の人間には非常にわかりにくく複雑怪奇だが、警察でも市役所でも、役所の内部では、それらが円滑に流れるような仕組みであるようだ。

しかし、物事は慣例通りにやっているだけではどうにもならないこともある。

それなのに、前例のないようなコトが起こった時、日本の役所の対応は鈍いし、いまある法律で対処できないような事態が発生すると、お手上げになってしまうケースが多いようだ。

自分のやる仕事がきちんと決まっているということで、決められていない仕事には手を出さない結果となり、責任の所在がさだかではなくなるわけだ。

それとは逆に、担当部署がどこと決まっていない問題について、誰かが「これは自分のところで扱おう」と勝手に手を出すと、他の部署や省庁からクレームをつけられて、権限争議に発展する場合もある。

残留農薬検査

みかんの黒点病

みかんに黒点病という病気がある。

皮の表面に、針でつついたほどの小さな黒い点がつく病気で、昔は、これがついている方が甘いという迷信があったほどで、味に対する悪影響は何もない。

ところが、これがついていると、セリ値が安くなるから、結局は農薬を使って、この病気の防除もやっているのがふつうだ。

こういう点について、消費者が農家を責めるのは、身勝手というものだろう。

農家にとっては、収穫した作物が1円でも高く売れることが、自分達の生活を守ために求められるのだから。

それとは逆に、最近になって、農薬の必要量は今までより少なくてもいいという考えもでてきている。

経済防除とでも言おうか、病害虫や雑草が、ほんの少し残っているくらいなら、収穫にはあまり影響がないから、100%防除しなくても良いという考え方だ。

雑草が少しくらい残っていても、それによって収穫が減らないなら、放っておいてもいいということだ。

残留農薬検査
人工密集地からホタルが姿を消す現象が、江戸時代にも記録されている。

しかし、全国各地でホタルの群生をみられなくなったのは、人口増加や都市化の進行だけが原因ではない。

昭和時代以降についていえば、戦後、河川や湖沼など水系の汚染が進んだことが、かなり大きな要因と言えるだろう。

田んぼや畑にかつてまかれた農薬もその一つだったし、油や洗剤などさまざまな物質が混じった生活排水も犯人の一人だ。

公害問題が騒がれ、規制が強化される前は、工場などからの排水もそうだった。

もともと、日本列島は、大小の河川に恵まれ、水系は豊かに発達している。

しかし、河川の幅が狭く、長さも短いから、大陸の大きな河川や湖などと比べて、ある物質が水系に流れ込んだ場合に、それを希釈し浄化する能力が低い。



残留農薬検査

専門家たちは、天然物の危険性をアピールしているのではない。

何が安全で、何が危険かという問題は、それが天然物か合成物かで決まるのではないということが一つ。

そして、もし超微量であっても発ガン物質の存在を認めないというなら、それよりはるかに危険なものが、自然界にもたくさんある

それらと比較すれば、農薬の危険性は、ほとんどの場合、無視できる範囲内だ、と言っているのだ。

1987年4月、米国の権威ある科学雑誌『サイエンス』に、衝撃的なレポートが掲載された。

「考えられる発ガン危険性のランキング」と題したこの論文は、「392種類の化学物質について動物実験を行った結果、合成化学物質の60%、天然化学物質の45%に、少なくとも一種類以上のげっ歯動物に発ガン性が確認された」と報告し、それらについての「発ガン危険性」のランキングについて述べている。

残留農薬検査
他の作物もそうだが、収穫したお茶に農薬を残留させることは、絶対に許されない。

だから、収穫をいつにするかを十二分に計算したうえで、防除日程を決めるのだから大変なのである。

お茶農家にとっては、4月下旬から5月初句の一番茶が、収入の80%近くを占める。

しかし、二番茶、三番茶も収入になるし、茶樹を保護するためにも、一番茶の摘採が終ったら、病害虫がつかないように、早目に防除をしておきたいところだ。

しかし、近隣でまだ摘採が終っていなければ、たとえ自分の茶園であっても絶対に農薬を散布してはならないことになっている。

「いいお茶を作ることが、ここが産地として生き残れることだし、産地の中でやっていくためにはルールは守らねばならない」角皆さんの言葉に、二人もうずく。

「適期防除。これが大事です。一番いい時に防除することが、結局は回数も量も減らせることになるんですから」

農薬が作物に残留することを心配する消費者が増えている。

果物や野菜は必ず洗って食べるという人も多い。

しかし、お茶を洗って入れる人はいない。

だから、茶農家も、農薬の使い方には、厳格なルールを作り、細心の注意を払っている。

掛川のお茶から、残留農薬が検出されたことはない。

「万が一にでも、一度そんなことになったら、産地としては致命的な打撃になる。これからもないでしょう」掛川農協の職員も自信をもって笑った。

残留農薬検査
ソテツの実に2%も含まれているサイカキシン、春先に季節の到来を告げるフキノトウに含まれているフキノトキシンも、かなり強い発ガン物質である。

自然界には、実に数多くの発ガン物質が存在している。

それらの中で、横綱級といわれているのが、「アフラトキシン」である。

こいつは、トウモロコシやピーナッツなどにつくカビがつくり出す物質だ。

他の発ガン物質に比べても、群を抜いて強い。

魚、鳥、ネズミなど、実験した全ての動物すべてにガンを発生させた実績をもち、発ガンに必要な量も、マイクログラム単位、つまり数PPbという微量である。

厚生省でも、食料品汚染を厳しくチェックしているが、何しろ、自然界で勝手に作られているのだから、始末が悪い。

たまにピーナッツなどから発見されて、大騒ぎになるのである。

ここにいくつかあげた天然の発ガン物質は、いずれも実験によって、発ガン性が確認されている。

農薬の場合は、同じ内容を含む多項目のテストが実施され、もしそこで発ガン性が確認されれば、認められない仕組みになっている。

「自然物の方がキケンだなんてことはない」と考える人も多いだろう。

しかし、これは紛れもない事実なのである。

誰でも知っている例をあげよう。

「単純な毒」ということなら、フグの毒や、毒きのこがあるし、食用にしている多くのきのこ類には、発ガン性の強いカビがついていることも確認されている。

1977年ごろ、レモンの皮などに塗るオルソフェニールフェノール(OPP)という防カビ剤には変異原性があるから危険だという理由で、全国的なボイコット運動が巻き起こったことがある。

その時の印象が強いせいか、今でも、レモンは発ガン物質でカビの発生を防いでいると信じ、レモンティーなどは発ガン物質を飲んでいるのと同じだ、という人がいる。

ところが、OPPは結果的に、変異原性は陰性と試験データが出ているのだが、何と果実の中身の方に、天然の変異原性物質が含まれていることがわかった。

この物質は、フラボン化合物といわれ、レモンだけでなく、いろいろな植物の葉や実、特に、ワラビにはたくさん含まれている。

残留農薬検査
村上さんも「その通り。労賃考えるとデメンさんをそう雇えるわけじゃないし、小さい子供も学校から帰ったらすぐ草取りの手伝い。全部家族総出ですよね。夏に子供つれて海水浴行くなんて絶対できんかったもんね。あの頃は本当にきつかったです」

もっとも、春先から秋の収穫まで、農家にとって毎日の作業が忙しいことには変わりがない。

美瑛町では弓道が盛んで、31歳になる大坪さんの息子さんも、高校時代から競技を楽しんでいる一人だ。

六段錬士の腕前で道内の大会では上位に入賞したことも多く、88年の京都国体には北海道の代表選手にも選ばれた。

しかし、ちょうどこの時期は収穫のまっ最中であり、一週間も休むわけにはいかない。

結局、出場を辞退した。

「テレビで開会式観てて、"いたましかった(もったいなかった)"と言って畑に出ていった。かわいそうだけど、本人も自覚もって考えた結論です。一番忙しい時だからね」

村上さんと、大坪さんに話を聞いてみた。

小麦、小豆、ばれいしょは二人とも、そして、村上さんは、グリーンアスパラ、ネットメロン、スィートコーンを、大坪さんは大豆、ビート、そして水稲をやっている。

二人とも、品目を多くしているのは、農作業のピーク時期を分散させるためだ。

大坪さんは終戦直後から、村上さんも、農繁期に手伝いに駆り出されていた頃から数えると30年以上、この土地の農業とかかわってきた。

昔と今を比べると、農作業の量と質は、大きな変化を遂げている。

「昔はね、とにかく草むしりが大変だったです。小豆なんかは、雑草取るのが少し遅れると、草の方が背たけが高く伸びちゃう。草に負けるんですよ。そうなったらもう、その畑はあきらめにゃダメですね。当時は、馬使って耕してたけど15cmくらいしか掘れない。今はトラクターで30cmとか40cmと深く耕せますからね。それで、草の種が発芽する割合も低くなっているんですね。それと除草剤がありますから」と大坪さん。

残留農薬検査
「ありがたか農薬ば、何で目のカタキにするとか」という久富さんだが、使用する時はやはり、使用基準をきちんと守り、安全使用を心がけている。

「腕をまくり上げて、マスクもせんでまいて、終わったらすぐに酒を飲んでるようなバカモンもいる。

そんなのをみるとあきれてモノも言えん」

もう一つ、農薬のメリットを、「経営的にみて素人でも分かるように」例をあげてくれた。

「除草剤には本当に世話になっている。

これがなきゃ、ウチのモンだけじゃ全部の田んぼに手がまわりません。

昔は、草刈り機の音がよう聞こえたけど、今は使う人はいない。

作業が楽だし、時間も省けるのが除草剤です」

農薬のメリット その1

「土づくりをしっかり」最近、農業関係者の多くが口にする言葉だ。

有機農業推進の立場の人たちからは、「土づくりをきちんとしていれば、作物が健康に育ち、農薬はいらない」という声すら聞かれる。

「だけど」と久富さんは続ける。

「いい土つくろうというのは、マジメに百姓やっている者なら当たり前のことです。

そしてたしかに、肥培管理をきちんとしていれば、病気の発生なんかはある程度押えられます。

でもね、どんなに健康な人間だって寒い時には風邪もひくし、ストレスたまれば腹も痛くなる。

そん時はクスリを飲んだり、医者に行ったりします」

残留農薬検査
「古い木はどこかに多少のキズはありますから感染しやすい。

青森ではりんごが密集していることも、容易に発生面積が増える一因のようです。

私共の試験場でも、いろいろと研究を進めていますが、今は、農家の人達に手抜きをせず、しっかりと防除することに努めてもらうのが第一です」

この話を聞いただけでも、農薬なしでのりんご栽培は、ほとんど不可能に近いことがわかった。

「農薬なしでは、市場に出せるものは、まずほとんど収穫できないでしょうね。

りんごとなし、それに桃なんかは、果樹の中でも病害虫にやられやすい作物なんです。

無農薬というのは、ちょっと考えられません」

もっとも、田中次長は別な視点から、最近の品質チェックの厳しさを懸念している。

腐らん病 その1

腐らん病は明治末期から大正にかけて激発したあと、しばらくは鳴りをひそめていたが、この十年あまり、再び問題となっている。

アップルロード沿いにクルマを走らせると、いたる所に"ふらん病の徹底防除を"などと書いた看板が目にとびこんでくる。

ごく一部にでも手抜きがあると、根絶はむずかしいから、地区ごとに呼びかけあって全体で取り組もうというわけだ。

それでもこの4~5年で、発生面積は徐々にだが増えているという。

88年の発生率は、県内のりんご園の35%(発病が確認された面積の比率。35%の樹が感染しているわけではない)で、「もうこれ以上、増やしてはいかんですね」と、青森県りんご試験場の田中次長も真剣な表情で語ってくれた。

残留農薬検査
このことからも農水省の稲作規模拡大を全国一律に促進しようとする政策は現実無視と言わざるを得ない。

「黒いネコでも白いネコでも、ネズミを獲るネコは良いネコである」の通り、「兼業農家でも、専業農家でも安くて旨いコメを安定的に生産できる農家が良い農家なのである」

まして兼業農家は所得が高くなるから助成策は講じにくい。

だから専業農家の育成に努めるべきであるといった議論は暴論である。

兼業農家は一般のサラリーマン世帯並みの収入を兼業で得ている。

そのうえで先祖から譲り受けた田畑を耕して、いくばくかの収入を得ているのである。

それは人並み以上に働いて得た収入である。

それを政府助成の対象とすべきでないと主張するのは、農家に「働くな」と言っているに等しい。

やみくもに規模拡大策を推進した農水省には責任がある。

食料の安定供給と稲作の国際競争力の維持を目的と考えるならば、稲作の実態、農家の知恵、それも時代の脚光を浴び始めたワークシェアリングという兼業の考え方を真剣に検討するべきである。

愛知県の岡崎平野では、稲作の大規模化が進み、三〇ヘクタール規模の稲作農家も珍しくない。

ところが、皮肉なことに、この地域で大規模営農が普及したのはトヨタ自動車という農家にとって優良な勤務先が整備されているという雇用条件のためである。

これにより稲作農家の多くは、規模拡大を志向する一部の農家に稲作を委託し、自らは農作業から解放されてサラリーマン暮らしを送っている。

残留農薬検査
この戦略は成功し、マクドナルドは外食産業の最大手となった。

ライバル会社も、これを真似て同様の戦略を展開している。

2001年9月のBSE騒ぎで、マクドナルドに一時ほどの勢いはないが、それでもマクドナルド戦略は揺らいでいない。

そこで問題は、コメ消費拡大にとって一大障害となっているマクドナルドの販売戦略を農水省は指をくわえて見ているしかないという事情である。

それがグローバル経済のルールであり、自由貿易の促進である。

農水省が政府の金を使ってコメ消費拡大のキャンペーンを展開しているが、それと対抗するかのようにマクドナルドもハンバーガーの宣伝を行っている。

何を食べるか。

それは消費者の好みにかかわる事である。

自ずと政府の介入には限界がある。

たとえば、日本マクドナルドという会社がある。

この会社は米国産の牛肉を食材にしたハンバーガーを主なメニューとする日本最大の外食産業の会社だ。

その販売戦略は明快である。

人間の食習慣は子供の時に形成され、それがいったんできあがると成人後もなかなか修正しない。

おおげさに言えば一生、その食習慣が付いて回るという理論に立ち、ハンバーガーの売り込み対象を子供に置いている。

次々と子供のハンバーガー好きを獲得して行けば、大人になっても食べる習慣が根付いているので、年月を経るごとにハンバーガーの需要は拡大し、マクドナルドの売上は増え続ける。

そう睨んでいる。

残留農薬検査
そして1999年の活動グループ数が三七四〇だった実績を踏まえて、2004年度にこれを四七〇〇に増やす目標を立てた。

さて、そこで2001年度の結果だが、驚いたことにグループ数は五三三九に達していた。

2004年度の目標をも大幅に上回る数字である。

問題は、この数字をどのように評価するかである。

単純に高齢者活動は活発化していると総括してよいか疑問である。

そもそもグループの内容も吟味せずに、数の調査だけでは高齢者がどんなグループを結成して、どんな活動を行っているかも不明で、分析のしようがない。

目標の立て方、政策を評価する手法の開発という最初に戻って再検討する必要がありそうだ。

政策そのものは、21世紀半ばの日本を展望する時、極めて重要な課題と言えるだけになおさらである。

日本の農業は、農業者の平均年齢が六一・一歳(2000年)と六〇歳を超えており、高齢者に依存した形となっている。

つまり高齢者の活動を活発化させることが、そのまま農村の活性化につながり、農業振興策にもつながるという事情にある。

また、今後、団塊の世代が高齢者の仲間入りすることを考えると、これらの相当部分が農村に回帰することも想定されるし、老後を農業で楽しもうと計画する人も多く登場しそうな状況でもある。

その意味で、高齢農業者の活動促進策は農政に限らず、日本全体にとっても重要な政策と言える。

そこで農水省は高齢農業者の活動促進策として、数々の施策を講じているが、その成果を計測するのに農山漁村高齢者の活動グループ数で評価することにした。

残留農薬検査
つまり、豆腐用、納豆用といった具合に生産された国産大豆を売り込むのは良いが、その販売価格は減反奨励金という価格には出てこない助成策があって、はじめて成立している販売価格である。

ここまで増産が達成されると、需要の拡大にも壁が立ちはだかってきた。

さらに減反奨励金の負担を軽減させるために、そろそろ奨励金の削減が財政上必要になってくる。

ところが奨励金を削減すると、生産農家はその分、大豆を値上げする必要がある。

しかし値上げすれば豆腐屋、納豆屋さんが困る。

需要は縮小するだろう。